今回口上人キャラバンがお邪魔したのは、 秋田冨士と呼ばれる霊峰鳥海山の麓、秋田県南部日本海沿いのにかほ市平沢にある飛良泉本舗。
蔵ではここ数年、蔵見学、蔵開放もしていないとの事で、案内をしてくださった第27代目当主となる予定の齋藤雅昭専務いわく「仕込みや、それ以外の時期に雑菌が増えるのが困る。」というのが理由でした。
仕込み真っ最中の3月のお忙しい中、キャラバンを受け入れてくれるなんて異例のことです!
普段は蔵見学をすることができませんが、ご好意により実現できたのです!
ありがとうございます!
齋藤専務は、口上人本舗主催の秋田酒イベント「SAKE GARDEN」には、どんなに忙しくてもご参加くださり、口上人本舗をとっても大切にしてくださる方なのです。
飛良泉本舗は、秋田県はもとより東北でも最古の酒蔵であり、日本では3番目に古い532年の歴史を持つ造り酒屋なのです。
長享元年(1487年)は、室町時代中期で京都東山の銀閣寺が建てられた年だそうで、驚きですよね!
かつては屋号「和泉屋(いずみや)」で、大阪の廻船問屋として、大阪から瀬戸内海そして日本海を北上して全国を回っていた商家だそうです。
なぜ、現在の秋田県にかほ市平沢に地をかまえたのでしょうか?
それには、当時の西方は応仁の乱で荒れていて、逃げ延びた説や、船が難破してたどり着いた説などがあるようです。
いずれにしても西方から遥か遠いにかほ市で酒造りを始めた物語には、とても興味が湧きますね!
長い歴史を感じる酒蔵の中に入ると凛とした雰囲気があります。
暖簾の奥から今にも着物に前掛けを締めてちょんまげを結った商人が「おこしやす~」と出てきそうな感じがします。
にかほ沖で穫れたアオウミガメの甲羅に金色の飛良泉の揮毫
当時は回船問屋の屋号「和泉屋」と現在地にかほ市「平沢」から「平沢の和泉屋さんの酒」と親しみやすく呼ばれていたようです。
また、にかほ出身の増田九木(ますだきゅうぼく)という画工が、良寛和尚にお酒を送った際に「飛びきり良い白い水」と手紙に書き残したそうです。
飛びきり良いで飛良(ひら)、白い水は漢字を上下にすると泉、また「和泉屋」の泉でもあります。
それで「飛良泉」なのですね!納得です!
白い水とは当時はどぶろくだったのでしょうか?
9時半ちょうど酒米が蒸し上がりました。
蒸気が上がり蔵内にいい香りが広がります。
蔵人が慣れた手つきで甑(こしき)から移し替え、放熱しながら麹菌を振り入れます。
そしてざるに入れ、急いで2階にある麹室へ運びます。
今日もさばけの良い外硬内軟のお米が蒸し上がったようです。
待ち構えていた2階の麹担当の蔵人が麹室に入れて、いっきに広げて乾かしていきます。
山廃仕込みは乳酸を添加しない造り方です。
天然の乳酸が頼りになるので、温度や衛生面ではとても気を使います。
スピード、スピード、スピード勝負です!
ここからどんなお酒に出来上がっていくのか、まるで子どもを育てるかのような感覚だそうです。
麹を食べさせてもらいました。下の写真は栗のような香りに「美味しい!」とびっくりする詩織ちゃん!
仕込み蔵では、明治15年に本蔵を造った時の破魔矢(はまや)と木槌(きづち)が棟木に飾られています。
実はこの破魔矢から飛良泉の蔵付き分離酵母が採取されました。
「はま矢酵母」は、ここからきているのですね。
破魔矢に住み着いた酵母だからこそ歴史を積み重ねた味わいになるのですね。
酒蔵には蔵付き酵母が棲みつき、各蔵元が醸すお酒の香りや味わいの特徴の一因にもなっています。秋田県では秋田県酒造組合と共同で酵母の分離技術を確立し、県内の酒蔵に古くから棲みつく清酒酵母を永年の眠りから目覚めさせ、純粋培養して「秋田蔵付分離酵母」としました。これまでに、酒蔵の神棚や、天井近くの柱に貼り付けてあったお札、破魔矢などから清酒酵母の分離に成功しました。
平成24年度に4銘柄で販売をスタートした「秋田蔵付分離酵母」純米酒シリーズは、平成25年度は13銘柄、以降、さらに銘柄数を増やし、それぞれの蔵元が「秋田蔵付分離酵母」の特徴を活かした純米酒の開発を進めています。
日本酒は神事と結びつきが強いのですが、お酒に関係ある神様を祀った神社が飛良泉本舗内にあります。
日本三大酒神(しゅしん)神社として有名な、大神神社(おおみわ)・梅宮神社(うめみや)・松尾(まつのお)神社がありますが、
飛良泉本舗の敷地内には大正時代に建てられたお酒の神様松尾大社と金運材運の「弁財天」、五穀豊穣を合祀している稲荷神社があります。
敷地に神社があるなんてMy神社!?
地元の大工さんに依頼して、2年もの歳月をかけて作ったと言われていて、当時の齋藤家の財力を垣間見れますね。
さらにお庭の奥には、創業当初からあるという欅(けやき)の大木があります。葉が茂ると陽射しを遮り酒蔵は涼やかになるそうです。
樹齢五百年越え!!
まさに飛良泉を見守ってきた御神木ですね。
齋藤専務は以前、東京で映像制作関係の広告営業マンをされていて、秋田に戻ってきて1年だそうです。
まったく別のお仕事をされていたからこそ、わかりやすく日本酒のおいしさやこだわりなどを伝えていきたいと言います。
そして齋藤専務プロデュースのお酒も造っています。
今回は「短冊ラベル」シリーズ純米大吟醸AK-1 をいただきました。
日本酒初心者の詩織ちゃんですがどのようなコメントをしたのでしょうか?
それは口上人チャンネルをご覧くださいね!
口上人チャンネルはこちらから
飛良泉のお酒はやはり山廃仕込みで、ほどよい酸味が特徴です。
この酸味を舌に刺さらないような、刺激的ではなく丸く包み込むように、「主張しすぎず、甘さと酸味のバランスのとれた酒造り」を目指しているのだそうです。
「飛良泉 山廃純米 マル飛No.77」は、なんとミツカン酢と同じくらいの酸味だそうです。
普通お酢は飲めませんが、このお酒は癖になる美味しさなのです!
従来のイメージを打ち破ったという挑戦酒!ぜひご賞味ください!
また、山廃はもとより、誰も試したことのないようなタイプの酒造りにもチャレンジしていきたいそうです。
キャラバンの取材中にも新しい酵母を使った純米大吟醸の構想を練っているとのこと。どんなお酒ができるのか楽しみですね。
これも信頼している杜氏と蔵人との「和醸良酒」なのかもしれません。
齋藤専務は、とても印象的なコメントをたびたび残してくれています。
「ずっと、まったりと飲み続ける事ができるお酒を造りたい。」
最近は、フルーティで、香り高く、すっきりとしたお酒がブームになっています。ただ、多くのお酒が「最初の一杯」で飽きてしまう事があります。
齋藤専務は、いつもご自宅で「飛良泉 山廃純米」(みどりの角瓶)をぬる燗にして、ずっとちびちびと飲んでいるそうです。
私たちもご相伴に預かりましたが、冷とまるで違います!
「そんなお酒を作っていきたい」と齋藤専務。
これからも、齋藤専務の新たな酒造りの挑戦は続きます。
蔵元 | 株式会社飛良泉本舗 |
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代表 | 齋藤 雅人 |
創業 | 長享元年(1487年) |
所在地 | 〒018-0402 秋田県にかほ市平沢字中町59 |